君を、僕だけのものにして、ずっと飼っておきたい。

 

 

「‥‥はぁ‥やっぱり、ウィーズリーなんかの言う事を信じた僕が馬鹿だった‥」

ドラコは、一人呟いて頭を抱えた。

ここは、スリザリンの隠し部屋。僕の私室として使っている、広くて豪華な、部屋。

ここでなら、飼っておけると思って、僕は君をここへ連れてきた。‥というか、拉致した。

そして、僕のペットに相応しくなってもらうようにと、君に薬を飲ませた。

それがいけなかったんだ。

だって、その薬の効果ときたら‥‥‥。

 

 

 

「猫になる薬?」

ドラコは怪訝そうな目で、ロンを見た。

「‥‥いらない?そう‥‥ならいいけど、折角僕が好意であげるって言ってるのに、‥‥‥本当に良いの?」

悪戯っぽくそう言うロンは、二つ年上の兄たちに、恐ろしいくらいに似ていて、「血って凄いな」と、ドラコは関係の無い事を連想した。

「‥‥‥そんな得体の知れない物、いるかっ!!」

ロンの態度が気に入らなくて、ドラコは不機嫌にそう言い放ち、ロンの持った小瓶の中を睨みつける。その中に、不吉な色の紫の液体が入っていた。

どうせ唯の色水に決まっている、目の前の赤毛に高価な薬品を買う金なんて無い筈だ。

「あ〜‥ドラコ、僕を疑っているだろ?‥‥残念だなぁ、折角僕たち「お仲間」だってのに‥‥‥そうか、非常に残念だ」

いつに無く饒舌で、芝居がかったロンの目は、あまり視点が合っていない。

それは、この場所に充満する香のせいだった。

ここは、ダイアゴン横丁から逸れた通りのノクターン横丁の、更に逸れた道の奥‥‥「ある共通の嗜好を持った者たち」が集まる場所だった。

昨年の夏、ロンとドラコは偶然ここで、ばったりと顔を合わせてしまったのだ。その事が、ロンの言う所の「僕たちはお仲間」という事になる。

その嗜好と言うのが、「男色家」、「しかもご主人様専門」という、非常にマニアックかつ、死んでも家族や知り合いに出会いたくない場所であった。

そんな場所で、天敵に出会ってしまった二人は、揃って気絶寸前までショックを受けた。というか、その後立ち直るのに夏休みを丸々潰した。

それから、何とかお互いに口封じを約束させて、ついでに「飼いたい人物」の名を、捕虜として相手に教える羽目になり、そうこうしている内に、気付けば二人の関係は「天敵」から、「お友達(しかも、かなりマニアックな)」に変わってしまっている。

だから、今はこうしてこの場所で顔を合わせても、二人は普通に話せるし、お互いに相手を、情報交換源としてそれなりに尊重したりもしている。

己の気持ちを満足させる為にこの場所へ来ている、ロンとドラコだが、取り分けロンはこの場所の空気に馴染めない。グリフィンドールだからとか、そう言った事も関係しているのかもしれないが。今この場所に充満している香は、特にロンが苦手としているものだった。この場所(正確には店)で焚かれる香は、日替わりで換わるので、タイミングが悪かったとしか言いようが無い。

 

「オイ!‥しっかりしろ‥‥ウィーズリー‥!」

ドラコがロンの肩を掴み、軽く揺すって声をかけると、ロンの目の焦点は程なくして、正常のそれに戻る。

「‥‥あ‥あぁ、ドラコごめん‥僕また?‥」

「あぁ、そうだ‥‥大丈夫か?」

「‥‥‥うぇ‥気持ち悪い‥」

口元を押さえて蹲ったロンに、ドラコは同情の視線を向けた。ドラコもあまり、この香が好きではなかった。

しかし、今日は気分が優れないからと言って、帰る訳にはいかない。

今日はこの世界きっての、天才縄師による「下僕の正しい緊縛の仕方」の特別講義があるのだ。二人とも、何ヶ月も前から楽しみにしていた。

「‥‥はぁ‥‥早く始まらないかなぁ‥僕、楽しみすぎて昨日良く眠れなかったよ」

気分を持ち直したのか、ロンが明るくそう言ったので、ドラコも頷いた。

「あぁ‥‥楽しみだな‥」

そう答えたドラコの顔が、意味深に笑った。

「‥‥もしかしなくても、ネビルの事考えてただろう?」

ロンの目が、酷く悪戯っぽく細められたので、ドラコは少し頬を赤らめた。

ドラコは、ネビルが好きだった。普段は素っ気無い態度で、意地悪をし、虐めてしまうけれど。それは、ドラコの性癖ゆえの、歪んだ愛ある行為。

ドラコは、ネビルを飼いたいくらい好きだった。

「‥うるさい‥」

少し不機嫌になり、そっぽを向いたドラコの顔は、未だに赤い。それを見て、ロンがにやにや笑う。

「やっぱり、ドラコにはコレが必要なんじゃないかなぁ?」

そう言って片手で持ち上げたのは、さっきの紫の薬瓶。

ドラコは、少し呆れて「またか‥」と心の中で、溜息を吐きうんざりとロンを見た。

 

 

 

やっぱり、あんな得体の知れない薬を受け取るんじゃなかった。

しかも、愛するネビルに投与するなんて‥僕はどうかしていたんだ‥‥・。

ドラコの頭の中を、何度も後悔が渦巻いた。

しかし、時間はもう元には戻ってくれない。

ドラコの視界の先には、部屋の中を四つん這いで駆け回る、ネビルの姿があった。

ロンの協力を得て、ネビルを自室に拉致したドラコは、早速ロンから貰った薬品をネビルに飲ませた。

10分程昏睡して、目を覚ましたネビルは、四つん這いで歩き、「にゃ〜」という言葉以外喋らず、ドラコを不思議そうに見上げて、手を伸ばすと怯えた表情で逃げ回った。

ネビルは、正真正銘、「猫」になっていた。

 

「いらない」と、何度も断ったドラコを、この行動を起こすまでに駆り立てたのは、ロンの一言。

「僕は、この薬でハリーをモノにした‥その事実を、ドラコは無視できる?」

ドラコにとっての愛の矛先がネビルであるように、ロンにとっての愛の矛先がハリー・ポッターだった。

一ヶ月前まで、ロンは己の中の醜い本性を見事に偽って、ハリーの親友の位置に居た。

ある時ハリーが一週間の間、全く姿を見せない時期があった。その時期を挟んで、ロンとハリーの関係は一転した。親友から、妖しい恋人へと、劇的に変化した。

何気ない仕草の中に、明らかな淫靡さを含んで交わされる2人のやり取り。大広間で他愛の無い言い争いをしていても、ロンが怪しく目を細めれば、ハリーはうっとりと頬を赤らめて、不自然に折れる。ロンの性癖を知るドラコだけは、すぐに見抜けた。2人の関係。

その謎を、ドラコはいつも解けずに苛立った。

何か方法があるのなら、僕も同じ方法でネビルをモノにしたい。そう思っても、プライドの高いドラコには、ロンに頭を下げてまで、その方法を聞き出す事が出来ないでいた。

そして、今、目の前にその答えがある。

当然、ドラコがその誘惑に抗う事は出来なかった。

 

「‥‥ロ‥‥‥いや、‥‥ネビル‥おいで、怖くない」

出来るだけ、優しい声色でドラコはネビルの名を呼んだ。生まれて初めて、本人を目の前にして、愛しいその名を呼んだ。

猫になっても、流石に自分の名前は理解できるのか、部屋の隅で楽しそうにクッションとじゃれあっていたネビルが、ピクリと耳を反応させてドラコを振り返った。

「ほら‥‥虐めたりなんかしないぞ?」

両手を広げ、床に膝をつき、ネビルに優しい視線を向けるドラコ。その瞳に、愛しい気持ちが沢山込められていた。

ゆっくりと、ネビルがドラコに近付いていく。

少し警戒を滲ませた瞳で、上半身をかがめて、腰を高く上げた体勢‥‥ともすれば、誘っているようなそんな格好で、ネビルはゆっくりとドラコに向かって四つん這いのまま歩いてくる。

「‥‥にゃぁ‥」

小さく鳴いて、ネビルはドラコの前に腰を下ろした。

元々大きく、猫のように愛らしい瞳で、ドラコを見上げて首を傾げる。その仕草は、とても愛らしく、ドラコの顔に自然と笑みが浮かんだ。

「‥ネビル‥‥抱き締めるぞ?」

ドラコの問いに、ネビルは答えない。返事を待たずに、ドラコはネビルの身体を抱き締めた。

一瞬、びくりと肩を揺らしたネビルは、ドラコの腕から逃げ出さなかった。

「良い子だな‥」

ドラコが優しくそう言うと、その声色に安心したのか、ネビルの方からドラコに擦り寄ってきた。

「にゃ〜ぁ‥」

本物の猫の身体や機能を持っていないので、喉を鳴らすことはしなかったが、ネビルは嬉しそうに笑顔を振り撒いて、更にドラコに頬を摺り寄せる。

(‥‥やばい、理性が‥)

初めて腕の中に感じたネビルは、思いのほか小さくて、柔らかい。時折鼻をくすぐる栗色の髪からは、石鹸の良い匂いがして、ドラコの心音が痛いくらいに早くなる。ついでに、下半身にも熱が集中してしまう。

そんなドラコの変化に気付かないネビルは、あろう事かドラコの頬をぺろぺろと舐めだした。

「‥あっ‥‥コラ‥止めろ、くすぐったい‥」

慌ててドラコがネビルの顔を、自分から引き剥がす。

「にゃ?」

ネビルは不思議そうにドラコを見上げて、可愛らしく首を傾げた。

 

(まったくっ!!何てモノを寄越すんだ!‥‥ウィーズリーの奴!!)

心の中で悪態を吐き、ドラコは着ていたシャツを乱暴に脱ぐと、足早にバスルームへと向かった。

あの後、すっかりドラコに心を許したらしいネビルは、散々ドラコにじゃれついた挙句に、ドラコの腕の中で眠ってしまった。ドラコのシャツに涎をたらして、無防備に可愛い寝顔を晒した。

ドラコの欲情は行き場を無くして、生殺しも良い所だ。

ネビルを起さない様にと、試行錯誤の後にようやくの事で抜け出した時、ドラコの半身は完全に勃ち上がり、先走りの液体で下着をたっぷりと濡らしてしまっていた。

(犯して、虐めてみたいけど‥‥猫だぞ?冗談じゃない‥主従関係の醍醐味は、可愛い下僕に「ご主人様」と呼ばせる事だろう!?)

ネビルを起こしてしまう事を恐れて、声には出さずに、ドラコは自分の中の憤りを頭の中に反響させる。

服を全部脱ぎ、完全に反応している自分の身体に溜息を零して、ドラコは足早にバスタブへと向かい、カーテンを閉めた。

 

くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、ドラコの骨ばった大きな掌が自身を擦る。

「‥‥はぁっ‥‥ネビルっ‥‥‥‥んっ‥‥!!!」

自分の手と指によって、快楽に導かれドクンっと、勢い良く吐き出される、ドラコの欲望の証。

ネビルを想ってこの行為をするのは、何度目だろう。

好きで好きで、狂いそうな程ネビルが好きで、叶わぬその願いを、何度自分の手で慰めてきただろう。

今、自分のベッドの上にそのネビルが居るというのに。猫になってしまったネビルには、そんな行為を強要できない。人間同士なら、言葉で自分の気持ちを伝えることが出来るのに、猫には出来ないし、伝わらない。ただの虐待になってしまう。結果、猫は自分から離れていく‥‥。

「‥ウィーズリーめっ‥」

ドラコは、低く唸るように呟いた。自分は、ロンを友人だと思っていた。同じ趣味を共有する彼を、何時の間にか信頼していた。‥‥それなのに、この仕打ちは何だ?

自分が目的を‥ポッターを手に入れると言う目的を、達成したから、ドラコはどうでも良いと?悪質な悪戯を仕向けてきたのだろうか?‥‥そんな、下らない感情に、簡単に引っかかってしまった愚かな自分に、スリザリン生よりも性格の悪いロンに、ドラコは憤っていた。

 

身体を洗い、お気に入りの入浴剤を入れた湯をバスタブに張り、ドラコは気分の転換を図っていた。

目を閉じて、これからの事を考えた。

ネビルをどうしたら良いだろう?このままの状態では、グリフィンドールの寮に帰す訳にはいかないし、折角拉致してきた意味が無くなってしまう。

ドラコがそんな事を考えていると、ネビルの声が聞こえてきた。

「にゃー」「にゃー」と鳴きながら、脱衣所とこちらを隔てる扉の前で、戸を爪で引っ掻いている。

飼い主を探そうともがく、猫の仕草。・・・・今や、ネビルは完全に猫だった。

ドラコは、バスタブから出て、ドアを開けてやった。

そこに現れたネビルは、大粒の涙を流して、ドラコを見上げた。相変わらず四つん這いの格好で、手の指先が仄かに赤くなっていた。

「‥ふにゃ〜ぁ‥にゃ〜‥」

涙で濡れた大きな瞳にドラコを映すと、ネビルは更に泣き出して、ドラコに飛びついた。

「お‥おい‥服‥‥」

ドラコが拉致して来た時のまま、制服姿のネビルは、濡れたドラコの身体に抱きついたので、ドラコは思わず慌てたが、数秒後に自分の失言に気付いた。

‥猫にそんな常識、通用する訳が無い。

ドラコに抱きついたネビルは、「にゃー」「にゃー」と鳴き続ける。

自分に縋るネビルに、ドラコは込み上げる愛しさを感じた。

「‥悪い‥‥寂しかったのか?」

ドラコが問いかけると、ネビルは言葉の意味を理解したように、ドラコを見上げて、その頬を赤い舌でチロリと舐めた。

「すまなかった」

ドラコがネビルの頭を撫で、そう言うとネビルはなき濡れた顔を綻ばせて、笑った。

「‥‥みゃあ‥」

まるで返事のようにそう言って、ネビルはドラコの裸の胸に頬を摺り寄せる。

(‥‥だから、‥ヤバイだろう‥‥この状況は‥)

誰にとも無く悪態を吐いて、ドラコは頭を抱えた。

一度熱を放った筈の場所に、再び熱が集まるのを感じてしまっていた。

 

裸では流石に理性が持たないと考え、まずは場所を変えようとネビルの肩を抱き、ドラコはバスルームから脱衣所へと移動した。

しかしドラコの隙を突いて、ネビルが開いていたドアから、バスルームへと戻ってしまう。

「‥‥ネビル?」

ネビルの意図がわからず、ドラコは首を傾げて、ネビルを呼んだ。

バスルームの中から、可愛らしい鳴き声が絶えず響いてくる。‥‥まるで、ドラコを誘っているようだった。

仕方なく‥‥もとい、可愛い声の誘惑に負けて、ドラコは結局何も身に付けていない状態で、再びバスルームへと足を踏み入れた。

ネビルは両手をバスタブの淵に掛け、床に膝を突いた「掴まり立ち」の格好で、首だけをドラコに振り返って、しきりに何かを訴えている。

「にゃ〜‥にゃあ〜‥にゃ〜‥」

ドラコが近付くと、鳴き声がだんだん激しくなってきた。

「‥‥‥もしかして、‥風呂に入りたいのか?」

ドラコが聞いた。

ネビルの顔が、目に見えて明るく‥笑顔に変わる。

大きな瞳で、じっとドラコを見上げて、ドラコがOKを出すのを待っているみたいだった。

ドラコは迷った。

ネビルが望むのなら、風呂でも何でも入らせてやりたいとは思う。‥‥しかし、猫である彼が1人で入浴できるとは思えない。‥‥‥すなわち、自分も一緒に入る事になるだろう。‥‥‥‥‥‥そんな事になったら、ドラコの理性が崩壊しかねない。ただでさえ今だって我慢しているというのに‥。

渋い顔で悩み始めてしまったドラコを見て、自分の要求が受け入れられないのだと思ったのか、ネビルは悲しそうに眉を顰めて、四つん這いでドラコの足元へと歩み寄った。

そして、ドラコの足‥膝の上辺りをぺろぺろと舐めだした。

「うわっ‥‥ネビルっ!?」

ドラコは驚いて、少し身を引く。

ネビルは縋るような瞳でドラコを見上げて、空いた間合いを詰めて、またドラコの足を舐める。

「‥‥わかった‥‥から、舐めるな‥」

ドラコは真っ赤な顔でそう言って、ネビルの手を取って本来ネビルがそうあるべき体勢に立たせた。

このままネビルに足を舐められるなんて、ドラコにはとてもじゃないが耐えられない。固い床にネビルを押し倒し、欲望の限りに犯してしまいそうで、怖かった。

ドラコに自分の望みが通じたと理解したのか、ネビルはまた嬉しそうに笑った。

にゃあにゃあと嬉しそうに鳴いて、ドラコの首筋に顔を埋める。

ドラコは溜息を否めない。

‥‥猫で無ければ、一生叶わなかったかもしれない、自分になつくネビルの姿に、酷く欲情している自分が、汚らわしい生き物に思えてならない。

 

「服を脱ぐぞ?‥ここでは駄目だ、向こうで脱ぐんだ‥わかったか?」

ドラコは幼子に語りかけるようにそう言いながら、ネビルを抱き上げ歩き出す。

途端にネビルは嫌々と首を振る。このまま、バスルームから出て行きたくないらしい。

「‥‥あのな、服を脱がなければ‥入れないんだ‥‥わかっ‥」

再度説き伏せるように発せられたドラコの言葉が、中途半端に止まる。

ネビルの大きな瞳に、大粒の涙が浮かんだからだ。

‥‥‥ネビルは確かに前から泣き虫だったが、猫になってから更に拍車がかかったようだ。

子供のように些細な事で涙を流して、ドラコを翻弄する。

「‥わかったよ、ここで脱げ‥」

ドラコは観念したようにそう言うと、ネビルの身体を床に下ろして服を脱がせた。

ネビルはドラコの長い指が自分の服を脱がせていく様を、嬉しそうにじっと見ていた。

 

 

湿度の多い場所に、ネビルの可愛らしい声が響く。

バスタブの中でドラコを跨ぎ、向かい合わせの格好できゃあきゃあと、嬉しそうにお湯を手で跳ね上げては、笑う。

ネビルは心底楽しそうだが、跨れたドラコはたまったものじゃない。

白くて柔らかい内腿に脇腹を挟まれ、ぷっくりと立ち上がった乳首が目の前のお湯から出たり入ったり‥‥しかも、完全に立ち上がった自身はネビルのお尻に、素股のように擦られて‥‥。視覚の暴力と、感覚の暴力に、理性が負けてしまいそうだ。

ずっと無言のドラコを、流石におかしいと思ったネビルは、騒ぐのを止めた。

不思議そうにドラコを見上げて、視線が絡むと嬉しそうににこりと笑った。

「‥‥にゃあ?‥‥‥にゃ〜‥」

可愛らしく首を傾げて、まるで「どうしたの?」と言っているような仕草をして、それからまた笑う。

そして、ドラコの視界にネビルの顔がだんだんと迫ってきた。気付いたら、唇同士が触れ合っている。

自分の理性が誘惑に負けてネビルに襲い掛かったのだと、ドラコが理解するのに数秒を要した。

重なったままの唇。

ネビルは不思議そうにドラコを見上げてはいたが、嫌がっては居なかった。

ドラコの目の前でニコニコと笑い、突然ドラコの唇を舌で舐め始める。ぺろぺろと、誘うように動くネビルの舌の感触に、ドラコが薄く唇を開くと、ネビルの舌は当然のようにそこへ入ってきた。

それからはもう、お互いに夢中だった。

舌を絡ませ、口内を舐め合い、唾液を絡ませ、吐息を吐き出す。

欲情を煽るだけでしかないその行為を、貪る様に続けた。

 

「・・・!?・・・んあっ・・・はっ・・・・・・にゃぁ〜・・・」

口付けの合間に理性の限界を感じたドラコは、とうとうネビルの身体に触れた。しかもいきなり、肝心要の敏感な蕾の中に・・・・少しだけ指を押し込んだ。

途端にネビルの身体は大きく跳ねて、甘い吐息を吐き出しながら、不安な顔でドラコを見上げた。

「大丈夫だ、酷い事はしない・・・・優しくするから」

ドラコの言葉と優しい声音に、少し安心したのかネビルは強張っていた表情を、少しだけ和らげた。

「嫌だったら・・・僕を引っ掻け・・噛んでも良い・・・・」

そう言って、ドラコはネビルの中に指を一本、根元まで埋め込んだ。

苦しそうに眉を歪めたネビルは、縋るような視線でドラコを見上げて小さく鳴いた。

「ん・・・・・んにゃ・・・あっにゃぁ・・っん・・・・にゃんっ・・」

ゆっくりと指を出し入れすると、ネビルはドラコの首に腕を絡めて乱れた声を洩らす。

痛みと違和感の中に、快感を感じ始めているようだ。

「気持ち良いか?」

ドラコが聞いたが、猫であるネビルが理解できるわけが無い。

眉根を寄せた困ったような顔で、にゃあにゃあ鳴きながらドラコに縋るだけ。

「増やすぞ?」

聞こえていないと知っていながら、ドラコはそう宣言しネビルの身体の中に2本に増やした指をねじ込む。

「あぁっにゃあんっ・・・・・ん〜っ・・・・んんっ・・・」

ネビルは唇を噛み締めて、精一杯の抵抗のつもりか首を一生懸命に振った。

入浴の効果で上気したネビルの頬を涙が伝う。

「嫌か?」

優しく問いかけながら、ドラコはその涙を舌で掬ってあげる。

そんな些細な事でも快感を感じるらしいネビルは、ビクビクと身体を震わせて、嫌々を繰り返す。

「にゃあ・・・にゃっ・・・・・んにゃぁ〜」

喘ぎと嗚咽が入り混じった可愛い声で泣き続けるネビル。

ドラコはもう一秒だって待てそうに無い。

 

「入れるぞ?」

ネビルの中を解すように動かしていた指を引き抜き、白くて柔らかいネビルの双方を掴んで開かせる。

本能で何をされるか悟ったのか、ネビルは大きな瞳を目いっぱい開き、息を詰めた。

熱いお湯と一緒に、ドラコの猛りの先端がネビルの身体にゆっくりと差し込まれる。

ネビルは詰めていた息を吐き出し、浅い呼吸を繰り返す。

指とは段違いの太さと熱さに、戸惑いと痛みが涙になってポロポロ流れた。

「あひっ・・・・ひゃあ・・ぁん・・・・・あ・・あにゃっ・・・・・にゃああぁんっ・・」

ドラコがゆっくりとした動作でネビルの腰を落とし、自分を差し入れ始めると、ネビルは嬌声を絶えず零した。

きつい締め付けと中の熱さに、ドラコは一気に押し入りたい衝動を寸での所で押しとどめる。

ただでさえネビルに無理を強いているのに、これ以上したらネビルの華奢な身体が壊れてしまいそうで怖かった。

長い時間をかけて、ネビルの内部の感触を確かめるように、ドラコは根元まで自身をネビルの身体に埋めた。

「・・・・・苦しいか?」

まるで自分を拒絶しているかのような締め付けに、ドラコはネビルに問いただす。

言葉の変わりに答えたのは、酷く澄んだネビルの瞳。

涙で濡れ、眉根を苦しそうに寄せたまま、まるでドラコの真意を確かめるようにドラコを見上げている。

「・・・・好きだ・・・・ずっと君が・・・・ネビルが、好きだった」

ドラコの始めての告白。

ほんの一瞬、ネビルが微笑んだ気がした。

 

 

 

 

 

続く。

 

ずっと暖めていた「にゃんこ」企画。やっと日の目を見せる事が出来ました。

ロンが酷い男になってますが・・・・。

申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・(反省)

2005・11・20 みづきちよ

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