愛するがゆえ６。～センチメンタル☆ジャーニー（前編）～
「はぁ・・・ドキドキするぅ・・・」
この建物内に入ってから、何度目か知れないネビルの溜息。
ドラコは苦笑して、その度に細い肩を抱き寄せた。
ネビルの腕には、生まれたばかりのハナが真っ白いベビードレスを着て、上手に収まっていた。
今日は、ネビルの両親にハナを初お披露目する予定だ。
ハナだけでなく、両親である２人も少し改まった服装でこの日に望んだ。
そして、そんな親子の後ろには更に３人の人影・・・。
「全く、いい年をして何です？その格好は？・・・・不良じゃあるまいし、みっともないったら・・・」
「そうですか？私としては、普段より落ち着いた格好のつもりなんですが？」
「もぅ、どうしてお２人はいつも喧嘩なさるのかしら？・・・・仲良くしましょう？ネビルちゃんのご両親に笑われてしまいますわよ？」
ルシウスの格好に文句を並べ立てる祖母と、別段気にしていない様子のルシウス。そしてお花畑全開のナルシッサ。
最近彼らの漫才も板についてきた。
しかし・・・・その３人の格好といったら、病院と言うこの場所にあっては酷く場違いだった。
祖母は、いつもの緑のドレスではなく、杏色のスーツを着ている。当初はそれだけだったのだが、ナルシッサの好みで必要以上に大きなコサージュが胸に付いていた。勿論、祖母は嫌がったのだが・・・・所詮、凡人にはナルシッサの天然光線に太刀打ちなどできず、結局押し負けてしまっていた。
ルシウスと言えば・・・・動く城でも持っていそうな、フリルの付いたシャツに、黒い細身のパンツ。祖母が「不良」と揶揄する気持がよくわかる。
ナルシッサは・・・・言わなくてもわかるだろう、いつものお花畑全開の胸の開いた深紅のドレス姿。
正直、ドラコは両親と一緒に歩くのが嫌だ。
いつもの格好ならば、非の打ち所の無い完璧な紳士、淑女であるはずの彼ら・・・・・今日に限って、来る場所を社交界と間違えた馬鹿２人に見えてならない。
擦れ違う人たちが皆、彼らを驚愕の視線で見ているのを見て見ぬフリを決め込んで、ドラコはネビルの肩を抱き、前だけを見る事にした。
そうこうしているうちに、一行は目的の場所へと辿り着いた。
両手が塞がっているネビルの代わりに、ドラコが扉をノックする。
すると中から、若い女性の「どうぞ」と言う声が聞こえた。
「レイアさんだ・・・・前に話したでしょう？両親を担当してくれているの」
女性の声を聞いて、ネビルはなんだか嬉しそうだ。
まだ見ぬ女性に軽く嫉妬を感じながら、ドラコは部屋のドアを開けた。
部屋の中は白で統一された綺麗な所で、広い空間にベッドが２つだけ少し離れておいてあった。
そして扉の正面に、ナース服を着た若い女性が笑顔で立って居た。
「いらっしゃい、待っていたのよ」
前もって今日の事を連絡してあったので、レイアは笑顔でそう言って、皆を部屋の中へと招き入れた。
「こんにちは、レイアさん」
ネビルはにっこり笑って、親しげにレイアに歩み寄った。
「こんにちは、ネビルくん・・・久しぶりね、元気にしていた？」
「はい、レイアさんもお元気そうで何よりです」
まるで兄弟のように仲の良い２人の様子に、ドラコは少し・・・いや、かなり嫉妬した。（ガキ・・・）
「この子がハナちゃん？」
「はい・・・・僕、親になっちゃった・・・・」
ネビルの腕に抱かれた幼い命に、レイアが話題の矛先を向けると、ネビルは照れくさそうに頬を赤らめた。
「そう、・・・これから、頑張らなきゃね・・・応援してるわ！」
全ての事情を知っているレイアは、ニコニコとネビルにエールを送った。
しばらく和やかに、仲良さ気に話し込んでいた２人だったが、ふとネビルが視線をドラコへと向けると、完全にブスくれていたので慌てて会話を途絶えさせた。
「あ、紹介しますね・・・・・彼が、僕の・・・・旦那様のドラコです、それから・・・・あちらがマルフォイ夫妻」
それから、ネビルはレイアに新しい家族を紹介した。
「こんにちは」
レイアは笑顔でドラコを見た。
「・・・どうも」
ドラコは失礼にならない程度にレイアに会釈し、暴走しそうになる気持ちを一生懸命理性で押さえつけた。
「貴方の話は、かねがね窺っていましたが、・・・想像以上に若くてお美しい・・貴方に毎日会えるフランクが羨ましい」
ルシウスは社交辞令なのか、本音なのか、微妙なラインの言葉でレイアを褒めた。
「イヤですわ、・・・マルフォイさんだってまだまだお若いじゃないですか・・・それに、奥様もお美しいですし」
レイアはそれを笑顔でかわして、そんな言葉で答えを返す。
「まぁ、レイアさんたら・・・・お上手ね」
ナルシッサは嬉しそうに微笑んで、レイアと握手を交わした。
そして、ロングボトム家ではもう見慣れた光景が始まった。
「お祖母様・・・・お元気で何よりです」
「・・・レイアこそ、不自由はしていませんか？」
そんな事を言いながら、感極まって強く抱き締めあうレイアと祖母。
会いに来ようと思えば、それこそ毎日でも会えるのに、この２人はいつもこうだ。
３日前に会ったばかりと言う状況でも、まるで何十年も会えなかった親子のように、熱い抱擁をする。
「お祖母様ったら、一週間もいらしてくれないのだもの、レイアは何かあったんじゃないかと気が気じゃありませんでしたのよ？」
「ごめんなさいね、忙しかったのです・・・いろいろと、・・・でも、レイアの事を片時も忘れた事などなくってよ？」
「本当ですか？」
「勿論ですわ」
・・・・・・・・訂正、まるで恋人同士のようだ。
その光景を見て、ドラコは妙な安心感に襲われた。
さっきまで胸に渦巻いていた嫉妬も、急速に胸から消えていった。
「・・・・びっくりしたでしょう？」
そんなドラコに、ネビルは小声で囁いた。
「あぁ・・・・まぁ・・・でも、仲が良くて良い事じゃないか？」
ドラコは内心の狼狽を一生懸命に押し殺しながら、そう答える。
「そうなんだけどね・・・」
ネビルはドラコの言葉に曖昧に答えながら、どこか不安げな眼差しで２人を見る。
お互いに暗い過去と、欠落した家族を持っている祖母とレイア。おかしな具合に深く、強く、依存しあっている。
何十年か先、祖母が老衰で天に召されでもしたら、レイアは発狂して後を追ってしまうんじゃないかと・・・ネビルはいつも、その事が気がかりだった。
複雑な心境で祖母たちを見詰めるネビルの傍らでは、マルフォイ夫妻が羨ましそうな眼差しを向けていた。
ルシウスだけでなく、ナルシッサも、かなりの勢いでレイアを気に入ってくれたらしい。
「・・・・お母さん、わかりますか？僕・・・ネビルです・・」
躊躇いがちにネビルが母、アリスへと声をかける。
彼女の視線は、全くネビルを見てはいなかった。当然、自分にかけられた声も上手く認識できていない様子だ。
「・・・駄目かしら・・・」
少し残念そうに、でも潔く諦めた様子で祖母が言った。
正常な精神を保てなくなって久しいアリス。
まともな会話が出来るとは、初めから期待していなかった。
「お母さん、僕・・・・子供が出来たんです、見えますか？あなたの孫です・・・・ハナって言うんです」
そんな祖母の言葉を、ネビルは頑なに聞き入れようとはせず、何度も根気良くアリスに話しかけた。
しかしネビルが最初に声をかけてから１５分。
ネビルの声が掠れ初めても、アリスの反応は相変わらずだった。
「・・・・・・ネビル・・」
黙ってネビルの様子を見ていたドラコが、躊躇いがちにネビルの肩に手を置いた。
精神を病んでいる患者は、日によって気分の浮き沈みが激しい。
その証拠にネビルの父フランクは、折角会いに来たというのに、残念な事に今日は面会謝絶になっていて、彼のベッドはカーテンで四方を囲まれている有様だ。
今日はもう無理だ・・・・と、ドラコだけでなくその場にいた誰もが思った。
けれどネビルは諦めない。
自分を労わるように見詰めるドラコに、縋るような視線を向け、頑としてその意思を曲げない。
「お母さん・・」
切ない声でネビルはアリスに語り続けた。
その想いが通じたのか、それまで全くネビルの存在を無視していたアリスがネビルの方を向いて・・・・笑った。
「お母さん！！」
ようやく反応を返してくれた母に、ネビルは嬉しそうに表情を和らげた。
「・・・ネ・・ビル・・・」
アリスは、呟くようにそう言って、ネビルに向かって手を伸ばした。
正確には、ネビルが腕に抱くハナに向かって。
「ネビル・・・寝ているの？・・・・可愛いわね」
小さく掠れた声でそう言って、アリスはハナのマシュマロのように柔らかい肌に指を這わせた。
「・・・・・・お・・・母ぁ・・・さん・・」
ネビルの頬を涙が一筋伝う。
精神を病に侵され、病院の加護無しでは生きて行けなくなった母が、自分の分身であるハナを見て、自分を思い出してくれた。
その事実が、酷く嬉しかった。
「・・・・ネビル・・」
ドラコは微笑んで、ネビルの肩を優しく抱き寄せて、頬や瞼にキスをして、そのまま目尻の涙を唇で吸い取った。
「良かったな・・・・ネビルの想いが、ちゃんと通じたみたいだ・・」
優しく囁かれるドラコの声に、ネビルは泣きながら何度も何度も頷いた。
病院を後にしたネビルたちは、ハナをマルフォイ夫妻と祖母に預けてダイアゴン横丁へとやってきた。
七月の終わりに届いていた新学期の学用品リスト。
出産や、その後の事後処理で忙しかった２人は、再来週には学校が始まるというのに、全く準備をしていなかったのだ。
万が一知り合いに会って、一緒にいる所を咎められるのは厄介なので、２人は不本意ながら不自然に距離を空けて歩いた。
それにしたって、ネビルの危なっかしい事ったらない。
人にぶつかるのはしょっちゅうで、人の波に呑まれて身動きできなくなったり、変な勧誘に捕まったり・・・・見ていて、ドラコは何度肝を冷やしたか知れない。
もういい加減、誤解されても構わないから、ネビルの手をしっかり握っていようかと、そんな事を思った刹那・・・・気が付けば、ネビルの姿が見えなくなっていた。
「・・・・・嘘・・だろ・・・・」
ドラコの顔から血の気が失せて、背筋を嫌な汗が伝う。
慌てて辺りを見回して、ドラコの胸は直ぐに安堵に見舞われた。
数十メートル先に、愛しい栗毛を発見できた。
どうやら誰かと話し込んでいるらしい。
「・・・・ったく、帰ったらお仕置きしてやる・・・」
苦笑して悪態を吐きながら、ドラコは躊躇い無くネビルに近付いた。
「ネビル」
声をかけると、ネビルと、一緒に話をしていた人物も振り返った。
「あぁ・・・ドラコ、ごめんね・・・・ルーナと会ったものだから、つい・・・」
ネビルは直ぐにドラコに心配をかけてしまった事を悟って、謝った。
「つい・・・・って、君はどうしてそういつも・・・」
ぶつぶつと文句を言いながら、ネビルの隣に立って一緒に居た人物に目をやったドラコ。そこには、ネビルの言葉通りルーナ・ラブグットが立って居た。トレードマークだった長い髪をばっさり切っていて、遠目からは全くの別人に見えた。
彼女とネビルは、寮も学年も違うのに、どういうわけかとても仲が良い。
ルーナは、突然現れたドラコに驚く様子を見せなかった。けれど、何か言いたげに大きな瞳で、じっとドラコを見上げている。
「・・・・・・・僕の顔に、何かついているか？」
相手の意図がわからず見詰められているのは、なんだか凄く嫌な気分になって、ドラコは仏頂面でそう聞いた。
隣でネビルが「そんな言い方しなくても」と咎めている。
しかし、当のルーナは、そんな事微塵も気にしていない様子だった。
ただ無言でドラコをじっと見詰めている。
「・・・・・・・・（なんなんだ、こいつ）」
気味の悪さを感じて、ドラコは少し後ずさる。
同じ分だけ、ルーナもドラコとの距離を詰める。
ネビルは、そんな２人を不思議そうに眺めていた。
（なんだろう・・・・新しい遊びかなぁ？）
「・・・・・・・痛かった？」
数分間の睨み合いの後、ルーナはぽつりとそう言った。
言われたドラコは、何の事だかさっぱりわからず、思わず隣に居るネビルに、助けを請うような視線を向けた。
「・・・・・・・・？？」
ネビルはドラコの視線の意味すらわかっていない様子で、可愛らしく首を傾げる。
「ネビルじゃない・・・・あんたでしょ？子供産んだの」
ドラコの仕草に、ルーナは呆れた様子でそう付け加えた。
「・・・・・・・・・・は？・・・・ネビル！？君・・・・喋ったのか？」
家族と親しい教授陣以外、知らない筈の２人の秘密を、あっけらかんと口走った少女に、ドラコは酷く狼狽してしまった。
「まさか！！・・・・・・なんで、ルーナ知ってるの？」
濡れ衣を着せられたネビル。
彼にとってもルーナの発言は、爆弾だったらしい。慌てた様子で、２人の会話に加わった。
「・・・・・やっぱりそうなんだ・・・あんたたち、凄いね」
２人の様子を見ていて、ルーナは確信を得たようににっこりと笑った。
「変人」の名に恥じぬ不思議ちゃんのルーナに、ドラコとネビルはお互い真っ青な顔を見合わせ首を傾げた。
「つまり・・・・占いで見たのか？」
「そうだよ」
真剣な顔でルーナに詰め寄ったドラコに、ルーナは同じく真面目腐った顔で答えた。
あれからドラコとネビルは場所を喫茶店へと移して、ルーナに詳しい説明を求めた。
彼女の答えは、最近覚えた石占いをしていて、その結果で知っていた・・・という、にわかには信じられないものだった。
「ネビルたちが付き合ってたのも知ってたし、ハリーとロンの事も知ってるよ・・・・それからシェーマスと・・・・」
「わかった・・・・もぅいい」
「なんでよ、ドラコ・・・・僕、シェーマスの相手に凄く興味があるんだけど！！」
唇の下に人差し指を添えて、上目遣いにルーナが羅列しだしたカップルの名前を、疲れた表情のドラコが遮った。
中途半端に遮られた親友の名前に、ネビルは興味があるみたいで、早速抗議の声をあげている。
「ネビル・・・・頼むから・・・」
好奇心旺盛なネビルを、切ない声と視線で咎めて、ドラコは頭を抱えた。
よもや、そんな事で簡単に自分たちの秘密が外部に漏れるなんて・・・・・常識人のドラコにとっては、寝耳に水もいい所だ。胃にいくつ穴が開いても足りない。
こんな理屈がまかり通ったら、明日には自分たちの関係が世間に露見してしまう。
伴侶のそんな思考の葛藤に気付いたのか、ネビルは残念そうに・・・・それでも素直に彼の言葉に従って、それ以上の詮索を諦めた。
「・・・・・安心しなよ、あたし人に喋ったりしないよ？」
ドラコの様子を気遣ってか、ルーナは真面目な顔でそう言った。
「それは・・・・ありがたい・・・・・・だが、その・・・・石占い？・・というやつは、今流行っているのか？」
溜息を吐いて、ドラコは真面目な顔をして、ルーナに向き直る。
「うぅん・・・・・全然、パパの雑誌で取り上げたんだけど・・・・駄目だったみたい、皆石で遊ぶより、紅茶の葉とか、タロットとかの方がお洒落で良いって思ってるよ・・・・楽しいのにね」
そんな事を言って、少し残念そうに眉を顰めた。
「・・・・・そうか」
ルーナの言葉を聞いて、ドラコは少し安心したように溜息を吐き出した。
「ねぇ、そんな事より・・・・聞かせてよ、赤ちゃん産むの・・・痛かった？？」
ドラコの心配の種が解決したらしい事を悟ったのか、ルーナの話題はまた元に戻った。
「それは・・・・」
「ドラコ、話してあげてよ・・・僕も聞きたいな」
言い淀むドラコに、ネビルも興味津々な様子で詰め寄った。
「あのな・・・・初めに言っておくが、決して楽しい話じゃな・・・」
「わかったから、聞かせてよ」
「聞ぃ～かぁ～せぇ～てぇ～！！」
駄々っ子２人にせがまれて、ドラコは心底疲れた表情で話し始めたのだった。
そんな紆余曲折を孕んだ２人の夏休みが終わった。
学生の身でありながら、人の親になった２人にはまだまだ勉学に励まなければいけない。名残惜しいが、クリスマスまでの半年間は、愛しい我が子と暫しのお別れだ。
「ハナ、行ってくるね・・・・元気でね、病気しちゃ駄目だからね」
瞳に涙まで溜めてハナに別れを告げているのはネビル。
「・・・・・・いい子にしているんだぞ？」
まんざらでもないドラコの方も、腕に抱いたハナに向かって語りかけている。
「ほら、お２人とも・・・・早く行かないと汽車に乗り遅れてしまいますわよ？」
少し呆れた声音で、そんな２人を宥めているのは祖母。
諸事情で夫婦揃って出かけているマルフォイ夫妻に代わって、２人に付き添いキングズクロス駅まで見送りに来たのは良いのだが、２人ともさっきから代わる代わる腕にハナを抱いては、何度も惜しむように別れの挨拶を続けているのだ。そのせいで、随分余裕を持って家を出たはずなのに、時計は十時半を回ってしまっている。
高級リムジンで一行をここまで運んできた運転手は、あまりの退屈さにとうの昔に席を外して、お茶をしに行っている有様だ。
結局最後は、軽くキレた祖母にハナを取り上げられてしまった。
「うぅ・・・・ハナぁ～元気でねぇ・・」
大きな瞳を涙でうるうるさせて、ネビルはドラコに引きずられるようにして車から降りた。
「お祖母様、ハナを頼みます」
ドラコは心の底から祖母に頭を下げて、車のドアを閉めた。
そんな子離れできない両親を、車の窓ガラス越に眺めて、祖母はありったけの溜息を吐いた。
「全く・・・・週末になれば会えるでしょうに・・・困った子供たちだこと」
心底うんざりとした様子で呟いて、その後ふふと笑う。
世界には、望まれずに生まれてくる赤子がたくさん居ると言うのに、腕に抱いた生後一ヶ月になったばかりのこの赤子は、なんて幸せなのだろう。
あんなに必死に別れを惜しんでくれる両親が居て。
たったの一週間でさえ、傍に居られない事を悲しんでくれる両親が居て。
ハナの人生は、生まれた時から溢れんばかりの幸福に満ちている。
「じゃあ、ネビル・・・・ここで別れるぞ？・・学校でな」
一緒に改札を通った直後に、雑踏に紛れる小さな声でドラコがネビルに耳打ちした。
「え・・・・・ヤダ、せめて柱の所まで一緒に行こうよぉ」
ハナとの別れの感傷を未だ引きずっているらしいネビルは、物分りの良い彼には珍しく、甘えた仕草でドラコのシャツの裾を引っ張った。
「・・・・・・・仕方ないヤツだ・・・人に見られても知らないぞ？」
ネビルの可愛らしい仕草を、笑顔で見咎めたドラコはその要求をすんなり承諾してくれた。
「ありがとう・・・・見られたら・・・・・・そうだな、それは・・その時考えようね」
ドラコの答えに安心したのか、ネビルはにっこりと微笑んで楽天的な言葉を吐いた。
「全く・・・・君はいつもそうだな？」
台詞は面倒くさそうに、ドラコは緩む頬を自覚しながら前を向いた。
ネビルの歩調に合うように、少しだけゆっくりと歩きながら、決して振り向かず、もしもの時の安全対策を怠らない。
愛しい背中を追って歩きながら、ネビルは笑顔を絶やさなかった。
この人が、自分の生涯の伴侶なんだ。
場違いにそんな事を改めて実感して、嬉しい。
付き合い始めた頃、・・・・自分の気持を自覚した頃は、きっといつか自分たちは別れてしまうんだと思ってた。
訪れても居ない別れの時を悲観して、誰にも見付からない場所で泣いた事もある。
喧嘩をするたびに、もうこれで終わりなんじゃないかと、絶望の淵に立たされた。
自分たちの関係は、世間に胸を張っていられるものではなかったし、お互いの家の事を考えたら、嘘でも誰か別の人と結婚して子孫を残さなきゃいけないと・・・・ずっと、思ってた。
何度身体を重ねても、自分たちには子供を成す器官なんて無かったし、先は見えないくせに終わりだけは見えている恋だったから。
「危ない」
ぼんやりと考え事をしながら歩いていたネビル、声を掛けられて現実に意識を戻すと、あと数センチで壁にぶつかってしまう所に立って居た。
「奥様、そちらは魔法の壁ではございませんが？」
妙にかしこまってからかうドラコの声が、耳の直ぐ傍で聞こえる。
「何やってるんだよ、・・・・そんなにすっとぼけていて、ハナの母親が務まるのか？」
くすくす笑うドラコの腕が、しっかりとネビルの腹部に回っていて、背中から抱きかかえられていた。
「う・・・・・うぅ・・・・・ごめん・・・その、考え事・・・してて・・・」
恥ずかしそうに顔を赤く染めたネビルは、今にも消え入りそうな声で謝罪と言い訳の言葉を紡ぐ。
「ま、・・・・僕がネビルもハナも傍でちゃんと守ってやるから、構わないけどな」
澄ました顔でそんな事を言いながら、公衆の面前でネビルの頬にキスをしたドラコ。
「・・・・・・・・・・・・お馬鹿・・・誰かに見られたら、もう弁解できないじゃんか」
ネビルは真っ赤な顔で俯いて、今言える精一杯の悪態を吐く。
心の中で、嬉しさを上手に処理できなくて困っていた。
「弁解？そりゃあ、余地は無いね・・・・僕しっかり見ちゃったもん」
人ごみの中で、甘ったるい空気で抱き合っていた２人に、そんな声がかけられた。
その声を鼓膜が捉えた瞬間、流石に驚いたのか、ネビルだけでなくドラコの身体も大きく揺れた。
視線を向ければ、そこに呆れた顔の英雄が１人。
「ったく、何してんのさ・・・・・２人とも・・・もう汽車出ちゃうよ？・・・いちゃついてて遅刻なんて、みっともないんじゃない？」
言葉どおりの態度と仕草で腰に手をあてて、ハリーが２人を見ている。
「あ・・・・・うん、そ・・・そうだよね」
ネビルは真っ赤な顔でハリーの言葉に同意して、ドラコの腕から逃れた。
「邪魔するなよ」
心底邪険そうにハリーを一瞥して、ドラコはそう言った。しかし、時間に余裕が無いのは事実。
実際、こんな所でいちゃついている暇なんて無い。
３人は小走りで目的地へと向かう。そして、かなりギリギリの間合いで出発前の汽車に無事乗り込んだ。
ドラコはその足で早速監督生の仕事へと向かう。どのみち、一緒に過ごす事など出来ないので、ここでの別れは当然の流れなのだが。
「じゃあな、学校で」
笑顔を上手に隠したポーカーフェイスでネビルに囁き、ドラコは今の今まで一緒に居た雰囲気を一掃し、たった今偶然居合わせたという空気を纏う。
「・・・・・・・・うん」
ネビルはそんなドラコを大きな瞳で見上げて頷き、彼の背中が見えなくなるまでずっと見ていた。
汽車に乗り込んだ瞬間から、自分の存在を全く無視されたハリーは、砂を吐きたくなるくらい仲の良い２人を呆れた顔で見ていた。
前から２人は仲が良かった。ロンとの関係が上手く行っていない時、何度羨ましいと思っただろう。
会えない時間が長いせいなのか、一緒に居る時間を２人ともとても大事にしている。
恋人として、最高の関係を築いている２人。
羨ましいと同時に、少し憎い。
神がこの２人だけ贔屓しているんじゃないか？なんて、浅ましい妬みが湧いてくる。
「仲良いねぇ」
冷やかしと、虐め半分に、ハリーはネビルをからかった。
「・・・・・・・・うん・・・まぁね」
いつもなら、真っ赤な顔で恥ずかしがるネビルが、この日ばかりは曖昧に言葉を濁した。
その変化を目聡く見咎めて、ハリーは首を傾げた。
不自然に余裕のあるネビルの態度。
（・・・・・どうしたんだろう？何かあったのかな）
そんな事を思いながら、ネビルを促してハリーは汽車の中を移動し始めた。
長旅の間中、ずっと立ちっぱなしのわけにもいかないし。なんだか、人に聞かれてはいけない話をしなければいけない雰囲気だったのだ。
幸い、２人は直ぐに誰も居ないコンパートメントを見つける事が出来た。
棚にトランクを仕舞い、窓辺に向かい合って座る。
「・・・・・ねぇネビル？・・・夏休み、何かあったの？」
単刀直入にハリーが聞く。
ネビルは困ったようにハリーを見た。
何かあったのか・・・・と聞かれたら、とんでもない事があったと答えられるけれど・・・・。
自分だけの問題じゃない。
ドラコは勿論、家族や、先生たちも関わっているのだから、自分の一存で決められない。
ハリーを疑うわけでは無いけれど、親友だからと言ってなんでも話せない。
「うぅん・・・・別に・・・」
不自然に言葉を濁して、ネビルは心の中で何度もハリーに謝った。
（ごめん、あと２年だけ待って・・・・卒業したら、何もかも話すから・・・）
卒業したら、親友たちに全てを話そうと、ネビルはドラコと約束していたのだ。
「・・・・・・そう？」
明らかに挙動がおかしいネビルに、ハリーは不審気な視線を向ける。
「あっ・・・ハリー、ネビルー・・・ここ良い？？」
ちょうどそこへルーナがやって来た。
夏休みの間、彼女に何があったのか知らないが、首や手首にまたおかしな装飾が増えている。
「あ、良いよ～！」
「ルーナ、久しぶり！！」
２人は笑顔でルーナを迎えた。
「ネビルは久しぶりじゃないよね～」
２人の笑顔に、ルーナも笑顔で応えながら、そんな事を言ってネビルの隣に座った。
「え？夏休みに会ったの？」
ハリーはルーナの言葉に即座に反応して、ルーナとネビルを交互に見た。
今さっきネビルにはぐらかされた答えを、ルーナの口から聞けるかもしれないと考えたのだ。
「うん、ダイアゴン横丁でバッタリ」
「・・・・そう」
ハリーの問いに元気に答えるルーナとは対照的に、ネビルはなんだか元気が無い。まるで、触れて欲しくない所に触れてしまったみたいだ。
それに気付いて、ハリーは少し罪悪感に襲われる。
ネビル自身が話したがらない事なのだから、無理やり聞くのもなんだか悪いような・・・・そんな気分。
時期が来れば、ネビルはちゃんと話してくれるだろうから、今無理やりに聞かなくてもいいんじゃないか・・・。
「そうだったんだ」
数秒間で思考を纏めたハリーは、その一言でこの話題を終わらせる事にした。
そして話題をルーナの珍しい首飾りへと、意図的に変えた。
昨年はバタービールの蓋を繋げて作った首飾りをしていた彼女は、今年は丸い玉のようなものがたくさん付いたものを首にかけている。よく見ると、ひとつひとつに何か文字のようなものが書かれている。
「ねぇ、ルーナ・・・・それ、何のおまじない？」
ハリーに問われて、ルーナは嬉しそうに微笑んだ。
「これはねぇ・・・・東洋の‘ジュズ‘っていうお守りなんだよ、悪霊から守ってくれるの」
「へ・・・・へぇ～」
（またおかしなものを・・・・・）
聞いてしまってから、ハリーは自分で問いかけた事なのに、早くも後悔してしまう。
トレローニー教授をはじめとして、ハリーは占いの類を全く信じていないので、この手の話題に興味が無いのだ。
ふとネビルに視線を向けると、ネビルは興味津々の様子でルーナを見ていた。
「見せて」
そんな事を言って、ルーナの首に手を伸ばしている。
そんな彼の首筋で、窓から差す太陽の光を反射した何かが、キラリと光った。
祖母の厳格な育て方のせいか、ネビルは同級生と比べてアクセサリーの類を今まで全く身に付けていなかった。
そんなネビルがネックレスをしているのに気付いて、ハリーの興味はルーナよりもますますネビルに向いてしまう。
「ネビルもネックレスしてるんだ？・・・見せて」
軽い調子でそう言って、ネビルの首筋に手を伸ばす。
嫌がるかと思われたが、ネビルは素直にハリーの手にネックレスのトップを乗せた。
「あれ・・・・指輪なんだ・・もしかして・・・・」
ネビルのネックレスのトップが指輪だと気付いて、ハリーはピンと来た。
（マルフォイとお揃いなんだ）
ルーナの前なので皆までは言わなかったが、それでもハリーの意図はネビルに充分伝わったらしい。
恥ずかしそうにコクンと首を縦に動かした。
「あぁ、それ・・・・マルフォイとお揃いなんだよね」
そんな２人のやり取りを見ていたルーナは、事も無げに言い放った。
「夏休みは２人とも左手の薬指にしてたのに・・・・ネビル、外しちゃったんだ？」
更にそう付け加えられて、ネビルは真っ赤な顔でルーナを凝視してしまった。
実はこの指輪、気の早いナルシッサに薦められてドラコが用意した婚約指輪なのだ。
当然お揃い、サイズは左手の薬指にジャストフィット。
金持ちの常で、特注のオリジナルデザインのものなので、目聡い輩に見付からないように・・・と指から外して首にかけていたネビル。
ハリーやルーナにバレた所で、今更隠す関係でも無いのだが・・・・・既に生まれてしまったハナの事はともかくとして、ネビルは未だに「結婚」と言う事実が照れくさい。
絶対無理だと思っていた相手との将来を約束されて、嬉しいのは本当だが、学生の身で後ろめたいのもまた事実。
「・・・・そうなんだ・・・左手の薬指ね～・・・意味深～！！」
ハリーはくすくすと笑って、ネビルをからかった。
ネビルの様子がおかしかったのは、この指輪のせいだったらしい・・・・と、自己完結に辿り着き、結果的にあてられた腹いせも含んだ言葉だった。
「それは・・・・その・・・・・あの・・・」
ハリーのからかいを、素直に真正面から受け止めたネビルは真っ赤な顔でしどろもどろに言葉を紡ぐ。
今現在、自分の秘密の最重要事項はハナの存在。
婚約や、結婚の事くらいはハリーに話してしまっても良いんじゃないか・・・・。
そんな風にも思ってしまう。
これ以上の嘘は、ネビルの心の負担が大きすぎた。
しかし、ドラコに相談もしないでバラしてしまうのは、ドラコに申し訳ないような気がして・・・。
真っ赤な顔の奥で、ネビルは一生懸命に考えた。
（どうしよう・・・・・どうしよう・・・・・ドラコ、僕・・・・うっかり口を滑らしてしまいそうだよ・・・・・・どうしよう・・・助けて！ドラコ）
声にならない心の声で必死に叫んだネビルの声。果たしてそれがドラコに届いたのだろうか・・・それとも、計算しつくされた偶然か。
ちょうどそこへタイミングばっちりにドラコが現れた。
監督生の巡回らしい。
「五月蝿いぞ、廊下までお前らの馬鹿声が響いている・・・・・少しは静かにしてくれ、他の生徒に迷惑だ」
いつもの傲慢極まりない態度と物言いで、入り口から顔を覗かせたドラコ。
「学校に着く前から問題を起こさないでくれ」
一方的にそう言って、ハリーに指を突きつける。
「特に、そこの英雄気取りの傷物君？」
口の端をにやりと吊り上げて、薬指にキラリと光った指輪をこれ見よがしにハリーに晒した。
「わかったから、早くどっかへ行ってよ」
ハリーは面倒くさそうにそう答えた。
その刹那、一瞬だけ絡み合ったドラコとネビルの視線。
ドラコはネビルに向かって小さく頷くと、颯爽と踵を返して去っていく。
「ありがとう」
去っていく背中に、ネビルは小さく呟き微笑む。
そして、苦笑しているハリーへと向き直った。
ドラコの必要以上の傲慢な態度と、それに言い返すハリーの反抗的な態度。このやり取りが演技になってもう久しい。
本当はそんなに険悪ではない２人の関係。こんな馬鹿らしい事、止めてしまいたいだろう２人。
けれど、世間を欺く為には学生である間中、２人に課せられている見えない彼らの意図。
そんな２人を傍で見ているネビルは、いつも少しだけ申し訳ない。
自分も当事者の１人なのに、いつも守ってもらうばっかりで何も出来ないから。
「ハリー・・・・ごめんね？」
だから最初に謝った。
ハリーは笑って、「気にしないで？」と言った。
それからネビルは、小さく深呼吸して話し出す。
「あのね・・・・実は、・・・・・・僕たち、婚約したんだ」
「・・・・・・・・・・え？」
突然告げられたネビルの予想外の言葉に、ハリーは目を丸くした。
全てを知っていて無言を守るルーナは、面白そうにそんな２人を見ている。
「婚約って・・・・・ネビル？」
信じられない表情で、ハリーはネビルを凝視し続ける。
確かに・・・・同じ指輪を持っている２人。でもそれは、恋人の所有印みたいなもので・・・・現実的な拘束力なんて無いものだと思っていた。
「夏休みにね、お互いの家族に認めてもらったの・・・・だから、僕たち結婚するんだ・・・卒業したら」
「認めてもらった・・・・って、ネビル？？」
お互いの家族・・・・・・当事者じゃなくたって知っている、あの天下のルシウス・マルフォイと、恐ろしいまでに厳格なネビルの祖母に！？
ハリーの顔に「どうやって？」と書いてある。
親友の無言の意図を読み取って、ネビルは苦笑した。
自分たちには、是が非でも認めてもらわなければならない理由があったから、相手方だって認めないわけには行かなかったのだと、その理由はどうしても教えられない。
「いろいろあったけど、なんとか・・・・・・婚約指輪なんだ、これ」
嘘ではない言葉を羅列して、ネビルはネックレストップの指輪を、大事そうに服の中に仕舞った。
「・・・・・・・そう・・だったんだぁ・・・凄いね・・・・・おめでとう」
未だに信じられない表情ではあったが、ハリーは心からの祝福をネビルに与えてくれた。
「ありがとう」
そう言ってネビルはにっこり微笑んだ。
ルーナは相変わらず面白そうな表情で、１人楽しそうにくすくす笑っていた。
同級生たちとは明らかに違う生活を始めた２人。
週末には揃って帰省し、我が子を世話する。
そんな忙しなくも幸せな生活が始まった。
役職を全く持っていないネビルと違って、監督生でクィディッチ選手のドラコは、週末に何度も学校と家を行ったり来たりの生活だった。
結果的に、ハナと接する時間はネビルの方が何倍も多い。
「悔しい」
と、ドラコはいつも拗ねた。
「仕方ないでしょ？」
と、ネビルはいつも彼を慰めた。
人の親という、本来学生には無縁の役割も、だんだん板に付いてきた。
そんな彼らを、事情を知る大人たちは微笑ましげに見守っていた。
ダンブルドアやマクゴナガルは、隙を見つけては２人を自室に呼びハナの話を聞きたがったし、マダムポンフリーなどは月曜日の放課後に保健室へ報告に来る事を２人に義務付けた。その申し出は、少し強引ではあったが、初めての子育てで戸惑う事の多い若い２人にとって、彼女は良き理解者となってくれていた。
中でも予想外に気にかけてくれていたのは、スネイプ。
毎週のように生徒に課した大量のレポート。提出して、返ってくる時には採点の他に必ず手紙が添えられて戻ってきた。
「寒くなる季節ゆえ、子供の体調管理を怠るな」
「夏に咲いた花が泣き出したら、躊躇わずに抱き上げてやれ」
「レポートの出来が悪い、花が枯れたのか？」
などなど。
おおよそ外見からは想像できない細やかな気配りを、絶えず２人に与えてくれた。
授業後、出来の悪いネビルを居残りにさせても、必要以上の嫌味は言わず、無言で的確に指示を与え、最後に必ず「子供は元気か？」と聞いてきた。
誰にも内緒の週末の帰省を始めてから、ドラコとネビルの恋人の時間は今まで以上に減った。
その事を悲しいと思ってはいけないのだが・・・・やっぱり寂しい。
ただでさえ忙しい時間をやりくりしているドラコは、週末以外に回した仕事が多すぎて中々ネビルと一緒に過ごす時間が無い。
ドラコがその現状にオーバーヒートしてしまう頃合を見計らい、ネビルは深夜に度々ドラコの部屋を訪れて短い逢瀬の時間を作っていた。
今夜も甲斐甲斐しい若奥様は、闇に紛れて主人の元へと忍んできていた。
「スネイプ先生、すっごくハナの事気にしてくれているね」
シャワーを浴びて、未だ完全に乾いていない濡れたネビルの髪を、愛しそうに手悪戯しているドラコに、ネビルが囁いた。
「あぁ・・・・少し、気色悪いくらいな」
ドラコも微笑んで、軽く悪態を吐く。
「そんな言い方無いでしょう？」
態度の悪いドラコの頭を軽く小突いて、ネビルは苦笑した。
「事実だろう？あの人が子供好きなんて・・・・・似合わない」
態度を咎められたのに、全く悪びれないドラコはくすくす笑ってネビルの身体を抱き寄せた。
「そうだけど・・・・でも、感謝しなくちゃ・・・先生が居てくれたからハナは元気に生まれてきてくれたんだよ？」
ドラコの腕の中で微笑みながら、ネビルは話を続けた。
「産んだのは、僕だ」
子供っぽい反論と共に、ネビルの唇を塞ぐ悪戯なドラコの唇。
「わかってるよ・・・・感謝してます、旦那様」
うっとりと瞳を閉じたネビル。この後施されるであろう甘い愛撫を強請るように、ドラコの首筋へと無意識に腕を絡める。
それに応えるように、身に纏った空気に甘い密度を添えながら、ドラコはネビルの白い肌へと唇を寄せていく。
甘い陶酔に酔ってしまう直前に、頭の隅で「今度機会があったら、スネイプ教授に理由を聞いてみよう」などと考えながら、意識を快楽へと堕としていった。
To be continued‥‥。
恒例、チヨリンさん。
凛「チヨさん、お決まりのフレーズどうぞ（笑）」
千夜「長いので、一旦切ります・・・・」
凛「♪イヨはまだぁ～」
千夜「凛さん、年がばれますよ？（にやそ）」
凛「失礼な！私だって現役世代じゃないですよ・・・・私のアイドルは、森口博子だったもん！！」
千夜「・・・・・微妙じゃない？（失笑）」
凛「そうですかぁ？？」
２００５・０２・１３ 蒼向上委員会