悪い事だと知っていて、彼に抱きついた。

 

はっぴぃ☆ばぁすでぃ〜甘い時間

 

 

 

夜特有の静けさが支配する部屋の中で、ロンはビルにしがみ付いたまま、動かなかった。

自分の行為が、何を意味するのか・・・聡いビルなら、きっとわかってくれるだろう。

だから、何も言わなかった。

ビルは一時、何かを思案している様子で、何も喋らず、殆ど身動きをしなかった。

彼に抱きついたままのロンの耳に聞こえるのは、静かな息遣いと、確かな鼓動。

ビルは確かに今、目の前に存在している。

ロンにはその事実だけで、充分すぎるくらい嬉しかった。

それなのに、無意識にそれ以上を望んでしまったのは、きっと飢えのせい。

 

2人が始めて肌を重ねたのは、もう2年近く前の事。

それから1年間は、実質絶縁状態で・・・やっとお互いの存在の位置付けを「恋人」と定めてからも、キス止まり。

つまり2人は、1年半以上も長い間肌を重ねていないのだ。

お互いの素肌の温もりを知っているのに、なんて残酷な事だろう。

離れている時間が長すぎて、思考の片隅に埋没してしまった記憶は、もうあの時の感覚を忘れさせてしまった。

快感も、痛みも、温もりさえも・・・・・もう断片しか思い出せない。

それでも求めて止まない愛しい人の温もりを、1人ベッドの上で慰めたのは・・・一体何回だったのか、もぅ忘れてしまった。

求めても、相手に触れる事が出来なくて。自分の掌で身体を慰める日々。

恋人たちは確かに、飢えを感じていた。

その愛しい人が、腕の中に居る。この現状に逆らえる人間はどれくらい居るのだろう。

少なくとも、ロンには無理だった。

今すぐにでもビルに抱いて欲しいと、浅ましい欲望が五月蝿いくらい喚いている。

 

「*****」

静寂を破ったビルの声は、不鮮明だった。

けれどロンには、それが何かの呪文だと直ぐに気が付いた。一瞬だけピンと張り詰めた空気に、何かの結界呪文だろうと理解する。

元主席で、呪い破りのプロである恋人。彼なら、ロンの知らない難しい呪文も、自分たちの存在が見付からない便利な呪文も、きっと使える。ホグワーツにいとも容易く侵入を果たしたビルならば、朝飯前にやってのける。

ロンはビルに抱きついたまま、彼の次の動きを待った。

魔法を使う為に一度ロンの背から離れた片腕は、ゆっくりと元の場所に戻った。そして、息も出来ないくらいに強く抱き締められる。胸いっぱいに感じる、ビルの匂いにロンは眩暈すら感じた。

「・・・・良いのか?」

うっとりと瞳を閉じたロンの耳元に、不安げなビルの囁きが聞こえる。

ロンは無言で頷いた。

2人が兄弟の一線を越えた夜。あの日から、ビルは一度もロンを求めなかった。

飽きたとか、欲情しないとか、そんな理由じゃない事は、ロンにだってわかっていた。

彼の贖罪が未だ完全には終わっていない事も。

確かに、自分はあの時の事で傷付き、悩み、落ち込んだ。でも・・・・もう、それは過去の事。

家族で、兄弟で、恋人同士の自分たちに、もう遠慮はいらないのだと、ロンは無言でビルに訴えた。

無防備に相手の限界まで張り詰めた欲情の糸に触れる事で、ビルに許しを与えた。

 

自分はもう平気。

あの時の傷はとうに癒えたから。

抱き締めて。

ビルの匂いで、僕を包んで。

僕は今・・・ビルが欲しいよ。

 

数秒の後、ロンの唇は唐突に奪われた。

噛み付くように乱暴に、獣のように荒々しく、ビルは急速にロンを求めた。

急変したビルの様子に、ロンは驚かない。

自分が我慢していた間中、ビルはそれの何倍も我慢していたはずだ。

初めての行為の時に知った、ビルに隠されていた野性。

その後の一年間の彼の後悔を知っているロン。

普段の器用なビルの様子からは考えられないくらい、性欲によって荒々しく変貌を遂げる彼。

目の前の事しか考えられなくなるその様子は、怒ったときのロンに少しだけ似ていた。

ロンと同じ感情起伏の軌道は、間違いなく2人が兄弟である証。

 

「・・・ふっん・・・・ふぁ・・・・ぅ・・」

口の中を犯され、舌を吸われ、唇に噛み付かれる。ロンは精一杯の仕草でそれに応えた。

ほんの一瞬唇が離れた隙に、空気を吸い込もうとすると、信じられないくらいに甘い声が漏れた。

ビル以外を知らないロン。当然、この行為に慣れてなんか居なくて・・・ビルに流されるまま、与えられる口付けを享受した。

体中の力が抜けてしまって、立っていられなくなったロンの身体を、ビルは力強い腕で抱きとめて、決して離さない。

まるで肉食獣に捕食された動物みたいだ。絶対的な力の前に、屈する事しか出来ない。

ロンはその事を決して嫌だとは思わなかった。

ビルが自分を求め、支配しようとしているのが嬉しかったから。愛を求めすぎて枯渇してしまったからっぽの身体と心を、ビルで満たして欲しい。精一杯の信頼と、愛情の証としてビルの首筋に回した両腕。不慣れな動作ではあったけれど、ロンのその勇気を喜んでくれたらしいビル。

無言の激しい口付けが、更に熱を増した。

 

ロンがビルの唇に貪られる甘い感覚に酔っている間に、気づけばローブを脱がされ、中に着ていたシャツのボタンも半分以上外されていた。

ようやくキスが終わった時に、その事に気づいたロン。

馬鹿正直な反応で、目を丸くしてビルを見上げた。

ロンの身体を抱き締めていたはずのビルの腕。一体いつの間に、こんな悪戯をやってのけたのか。

「可愛いな」

そんなロンに、ビルは蕩ける様な笑顔を覗かせた。

途端に恥ずかしくなって、顔を背けてしまう恥ずかしがり屋の恋人に、ビルは苦笑して優しく・・・でも抗えない動作で、ロンの細い身体を床の上に押し倒す。

「俺を煽っておいて、今更恥ずかしいなんて・・・言わないよな?」

悪戯な声音が耳元で聞こえて、ロンの身体はそれだけで震える。

涙で潤んだ瞳でビルを見上げて、ロンは頷いた。

自分自身、こんな所で止める気なんてさらさらなくて・・・むしろ、もっと・・・を願ってしまう。

恥ずかしい気持ちは本当だけれど、それを凌駕してしまう欲情を持っているのもまた事実。

「寂しかったか?」

ロンの首筋に顔を埋めながら、そう尋ねたビル。急速にロンを求める仕草は、彼の方こそ寂しかったような気配を纏っていた。

「・・・・・・・うん・・・ビ・・ルは?」

掠れた声で尋ね返したロンに、ビルは答えなかった。代わりに、強く吸い上げられた柔肌。まるで「当然だろう?」と言いたげな、そんな仕草。

2年前のあの夜の事を、パーシーは「強姦」と言った。

ロン自身は、そんな風には認識していなかったけれど・・・遊ばれたかもしれない・・と、ずっと思っていた。

そんな兄弟たちの様子を間接的に目の当たりにして、ビルはきっと傷付いていたんだろうと、ロンにもわかる。

大好きな人を前にして、例え間違っていた行為でも・・・人間だったら、衝動に逆らえない事だってきっとある。

 

「あっ・・・ん・・・・ふぅ」

普段、自分以外は決して触れない首筋や鎖骨を、ビルの骨ばった大きい掌が動くたび、ロンの口から喘ぎ声が漏れた。

自分のその淫らな声が嫌で、ロンは無意識に自分の指を噛んで漏れる声を耐えた。堪える表情が更にビルの欲情を煽っているなんて、ロンは知らない。

「んんっ・・・やっ・・・そこっ」

キスをしていた時から、既に立ち上がっていた胸の小さな突起を摘み上げられ、ロンは大きく背を反らせた。

自分でも殆ど触れた事の無いその場所。ビルの指が触れた途端に、甘い痺れが身体を駆け抜けて行った。

困ったように顔を背けて、頑なに声を堪えているロンを見下ろし、ビルはくすりと笑った。

「ここが・・・どうした?」

悪戯にロンを辱めては、くすくす笑う。

「んぅ・・・駄目ぇ・・」

冷たい指先で、突起をこねくり回される度、ロンの意思とは関係無しに腰が揺らぐ。

狂おしいほどの熱の奔流が、触れられた場所とは別の場所へ向かって集中していく。

「・・・・・駄目?・・・・・・・こんなになってるのにか?」

更に意地悪くそう言って、ビルは片方の突起へと舌を這わせた。

指とは違うぬるりとした感触に、ロンの身体がいっそう強く跳ね上がる。

「ひゃあっ・・・あん・・・・やぁん・・・・・」

必死で声を堪えても、漏れてしまう自分の信じられないくらい淫らな声に、羞恥は底なしにロンを苛んだ。

「そんな声を出して・・・・気持ち良いって、聞こえるぞ?」

唇の隙間に、ロンの敏感な場所を挟んだままでそう言って、ビルは更に激しい愛撫を加えていく。

「あぁ・・・・・やっ・・・んん」

自分の嬌声に混じって聞こえる、ビルが自分の肌を愛撫する音。ロンは制御できなくなった声の変わりに、今度は両手で耳を塞いだ。

 

耳を塞いでも、こもったような自分の声が酷く大きく聞こえるだけで、変化はあまり無い。

くちゃぴちゃと、いやらしい水音も、触れられている感触も、揺らぐ腰も、何ひとつ変わること無くロンをじわじわと追い詰めていく。

持て余した快楽と熱を、ロン自身どうしようもなくなっていると知っていて、あえてビルは胸以外の場所を触らなかった。

まだまだ・・・・足りない。

長い間飢えを感じていた欲情を満たす為に、もっと自分を欲しがってよがり泣くロンが見たい。

歪んだ愛情。

狂気を伴ってしまうくらい、愛しい存在。

この先の行為を欲している身体とは別に、ロンを味わう今の行為を楽しんでいる自分が、確かに存在している。

ビルは衝動の赴くままに、しつこいくらいにロンの胸に愛撫を与えた。舌で舐めあげ、歯で噛み、唇で吸い上げ、指先で転がす。

痛々しいくらいに充血してしまったロンの身体。

ビルの巧みな仕草に限界近くまで追い詰められ、それでもあと一歩達せ無い場所で二の足を踏まされたロンは、とうとう泣き出した。

「んはぁっ・・・ビ・・ル・・・・・もっ・・・・・おねがっ・・・イかせ・・・・てぇっ」

涙をぽろぽろと零しながら、悩ましげな仕草でビルの長い髪を掴んだロン。

我慢できなくなった熱の開放を、素直に訴えた。

初々しい反応で、自分に強請った末弟に、ビルはようやくロンの肌から唇を離し、微笑んだ。

「・・・・まだ触っても居ないのに・・・胸だけでこんなに感じたのか?」

嬉しそうに言いながら、服の上からでも形がわかるほどに起立したロンの腰の中心に、視線を向ける。

恥ずかしさを忘れたロンは、自ら足を開いて更に懇願した。

「熱い・・・の・・・ビル・・・・・の手で、シてぇ」

甘えた哀願。

その気になれば自分で出来る行為なのに、ビルに主導権を委ねるロン。限られた時間の中で、少しでも多くビルを感じたいロン。

幼さゆえの、その素直な反応に、ビルの笑みは濃くなった。

 

「元気だな・・・こんなになって」

ロンの身体を包んでいた衣服を全て取り払い、生まれたままのロンの身体を静かに傍観したビルはそう言って、楽しそうにくすくす笑った。

「・・・・・ビル・・・は?」

全裸の姿を相手に晒すのは、2年ぶり。

一度肌を重ねている相手とはいえ、兄弟とはいえ、・・・愛しい人に全てを見られたロンは羞恥を否めない。

けれど、その羞恥の中でも、ロンはそう言葉を零した。

未だ相手に何もしてあげられていない自分。自分ばかりが快楽に溺れているのは、申し訳ないと思った。

「・・・・・・・ふっ・・・」

思いもしなかったロンの言葉に、ビルの顔から思わず零れた苦笑。

ロンの素肌に触れ、胸の突起を愛撫して、ロンの甘い声を聞いているうちにビルだってとっくに理性の限界を感じていた。

そんな自分に今更不安げな顔で「欲情してる?」と聞いてきた察しの悪い恋人に、思わず漏れた笑みだった。

「さぁな」

それでも余裕を演じて見せて、驚くロンの股間に顔を埋めた。

熱く濡れた舌先が先端に触れた瞬間、ロンの背筋を駆け抜ける快感の波。

くちゅくちゅと、淫猥な音を伴って与えられる直接的な快感に、先刻のビルの言葉の意味を考える暇も無く、頭の中が真っ白になった。

無意識に腰を揺らすロンを、満足げに見遣ったビルは、そのままロンの猛りを口に含んだ。

ビルの唾液と、ロンの先走りの液が奏でる水音は、先刻の愛撫の比ではない。

部屋中に響いているんじゃないかと思うくらいに、大きくて・・・・確かな感覚。

夢の中とは違う、リアルな空気。

大好きなビルが、確かに今、この瞬間、自分に触れてくれているんだと・・・・実感する。

「あっ・・・あぁビルぅ・・・・やっはん・・・あぁんっ!!」

そんな事を考えていたら、あっと言う間に迎えてしまった一度目の絶頂。

予告もなしに、ビルの口の中へと思い切り・・・・吐き出してしまった。

しまった。と、思った。

脱力感に霞む思考の中でも、ロンは必死に謝罪の言葉を探す。

この際、子供だとか、早漏だとか、馬鹿にされるのは享受するが、嫌われるのだけは・・・。

昔から、パニックに弱いロン。

考える事は出来ても、上手く言葉が紡げない。

結局、今にも泣き出しそうな顔でビルを見下ろす事しか出来なかった。

自分の股間に顔を埋めているビルが、ロンの視界の中でゆっくりと顔を上げる。

唾液と精液に濡れた、力を失った自身がビルの唇から這い出てくるのを、ロンは羞恥と後悔の中で傍観した。

ビルの表情を不安げに窺うロンの視界に、ゆっくりと露になったビルの顔。どこか焦点の定まっていない瞳にロンを映し、口に端に残ったロンの精液をぺろりと舐め上げる。

生まれた時から、傍に居て・・・・なんでも知っていたはずの、ビルの始めて見る色っぽい表情。妙に現実感の欠落したその光景を、ロンは無言で見守った。

 

怒られるだろうか。

そう思ったロンの耳に聞こえた、掠れたビルの声。

「濃いな」

言われた意味もわからずに、ロンはただビルを凝視し続けた。

「・・・・どうした?そんな変な顔して・・・」

どこか呆けたような表情をしているロンに気づいて、ビルはくすっと笑うと、そのままロンに覆いかぶさるようにしてロンを抱き締めた。

しっかりと抱き締められた、温かい体温。

「・・・ロン?」

少し心配そうに囁かれた言葉は、ロンの鼓膜に吐息まで一緒に吹き込んできた。

ロンの思考がだんだんと状況を認識していく。

そうだ・・・まず謝らなきゃ。

「・・・・・あ・・・の、・・・ビル?・・・・・・ごめん・・僕、その・・・」

ロンがたどたどしく言葉を紡ぐと、ビルは優しい笑顔でロンの顔を覗き込んできた。

優しい瞳が「皆まで言うな」とロンに抑止の声をあげている。

「色気の無いことを言うなよ・・・・もっと色っぽく誘ってくれてもいいんじゃないのか?」

くすくす笑って、ロンの額にちゅっとキスをするビル。

「・・・・・美味かったぜ?ロン・・・・最近自分でシてなかったろ?」

冗談とも本気ともつかない声音で、そう言われて・・・・ようやく、ロンは理解した。さっきの「濃い」という言葉の意味。

「・・・なっ・・!?」

一気に沸騰したやかんみたいに顔を真っ赤に染めて、ロンは信じられない視線でビルを見上げた。

「可愛いやつ・・・」

思った通りの反応を返したロンに、ビルは蕩ける様な艶っぽい笑みをこぼした。

思わず見惚れてしまったロン。

たった今。この瞬間に、・・・・・ビルの事が好きだと、再認識した。

 

「・・・・・ビル・・・」

うっとりと熱に浮かされた顔で、ロンはたった一言、ビルの名前を呼んだ。

思いを伝えるのに、多くを語る必要はないから・・・・たった一言に、全てを込めた。

そんなロンの思いを、しっかりと受け取ったビル。意図的に少しだけ、ロンに自分の腰を押し付けてきた。

布越しでもわかる、ビルの熱くて硬い猛り。

「痛いと言っても・・・止めないからな?」

優しい瞳で、けれど力強くそう宣言したビルの言葉に、ロンは頷いた。

「平気・・・・・前の時も、大丈夫だったから・・・・・」

ビルの瞳を真っ直ぐに見上げて、ロンは恥ずかしそうに言葉を紡いだ。

「そうか・・・」

ビルは短くそう答えて、ロンに笑顔を向けた。

与えられるキスを予期したロンは、うっとりと瞳を閉じた。

先ほどの荒々しいキスとは対照的に、優しく甘い口付けをロンの唇へと落として、ビルは一旦止めていた行為を再開する。

片手はロンの背中に添えたまま、もう片方の手で自分の服を脱ぎ捨てていく。もどかしそうなビルの脱衣を手伝うつもりか、ロンの腕がビルの身体の上を蠢いた。

不慣れなそのロンの仕草に、ビルは込み上げてくる愛しさを上手に処理できず、結局は中途半端なままで服を脱ぐ事を諦めて、ロンの身体を抱き寄せて、キスに没頭しだした。

「ん・・・・んっは・・・・あぁ・・・・んぅ」

軽い呼吸困難に、ロンの瞳はどんどん焦点を失っていく。

唇同士を重ね合わせているだけなのに。舌を絡めているだけなのに。・・・・どうしてこんなにも愛しい想いが溢れてくるんだろう。

無意識にビルに押し付けていた腰が、・・・身体中が熱い。

全てを委ねて、どうにかして欲しくなるこの欲求は、愛しさからくるのだろうか。

ロンには自分の考えが正しいかどうかわからなかった。

ただ、どうしようもないくらいにビルが愛しかった。

 

「・・・・はぁ・・・・あ・・・ビル・・・・・・・・好き・・・」

長いキスの終わり、唾液が2人の唇同士を繋いでいるのをぼんやりと眺めていたロンは、ぽつりと呟いた。

一体どこまで煽れば気が済むのだろう・・・こっちは必死で優しくしてやろうと、理性を総動員しているというのに・・・。

思わず込み上げてくる頭痛を否めないビル。

「あぁ・・・・俺もだよ」

苦笑して、少し悪戯に胸の突起を長い指で弾く。

ロンの身体は、糸で操られている人形のように、ぴくんと強張り、背を反らした。

そのまま、ロンの胸に舌を這わせ、肌の上を指で弄る。

ゆっくりと確実に、腰に向かって進んでくるそのビルの仕草に、ロンは無意識に腰を揺らめかせる。

快楽に飲まれた理性には、もう自分の身体を制御できない。与えられる快感を受け入れ、素直な反応を返す以外に出来ない。

一度絶頂を迎えたはずのロンの腰に、再び勃ち上がり始めている快楽の証に、ビルは微笑んだ。

自分のしようとしている行為は、ロンに痛みしか与えられないかもしれない・・・・それでも、歯止めの気かなくなった衝動。少しでも・・・たとえ、今だけだったとしても・・ロンを快感に導いてあげたい。

掌でロンの幼さの残るそこを捉え、愛撫をしながらビルは更にその先、既に赤く色づいてヒクつく場所に触れた。

ロンの先走りの体液が肌を伝い、その場所は既に濡れていたが、挿入するには充分とは言えない。

ビルはそこに、舌を這わせた。

「あっ・・・や・・・・・ビル、駄目・・・そんなの・・」

身体を大きく震わせて、ロンが抑止の声をあげた。物分りの悪いロンにしては珍しく、ビルの行為を把握しているらしい。

ビルはロンの言葉に構わずに、更にそこに舌を押し付け、解すような刺激を与える。

「やぁ・・・・んぁ・・・・指・・・・で、シてよ・・・・・・」

力の入らない指で、一生懸命にビルの髪の毛を掴んで、その場所から顔を反らせようと試みたらしいロン。しかし、その行為は結果的には、更にビルの行為を強請っているような仕草になってしまった。

されている事も、自分が今とっている体制や仕草も、全てが恥ずかしくて、ロンは喘ぎ声交じりの抵抗を続けた。

その抵抗を封じる為にか、ビルの器用な指がロンの先端を爪先でグリグリと嬲った。

「いやぁっん・・・や・・・あっあぁ・・」

泣きたいくらいの恥ずかしさと、痛いくらいの快楽。ない交ぜになった感情に、ロンはもうついていけない。

ここはどこなのか、自分は誰なのか、そんな根本的な事すら忘れて声をこぼす事しか出来なくなった。

 

抵抗の止んだロンに、少しだけ安堵しながらビルは舌と一緒に指を一本、ゆっくりとロンの中に差し入れた。

爪が全て収まりきらない内に、熱い内壁がきつく締め付ける。それでも、ビルの前戯によって湿り気を帯びたその場所は、快楽で揺らぐ腰に導かれるように、ゆっくりとビルの指を飲み込んでいく。

中を傷つけないように注意しながら、ビルは埋め込んだ指を少しだけ曲げ伸ばししてみる。

ロンの反応を窺ってみたが、別段痛がっている様子はなかった。

快楽に支配され、身体を揺らして、半開きになった赤い唇からひっきりなしに甘い声を紡いでいる。

それを確認して、ビルは二本目の指をそこに押し込む。

「んっ・・・あぁ・・・・はぁん」

ロンから漏れる、甘い声。そこに物足りない響きを認識するのは、・・・自分の都合の良い思い込みだろうか。

ビルは丹念に、根気良く、ロンの中を解していく。少しずつ奥へと侵入していく指。締め付ける熱い壁に、興奮を否めなくなる。

許されざる行為を、血を分けた弟に強いている自分。

その現状に興奮を覚える。

強く深い背徳が、ビルの欲情を刺激する。罪の味が蜜のように甘い。

押さえの利かない興奮が、ビルの行為を更に激しいものへと変えた。

更に数を増やした指で、ロンの中を掻き混ぜる。

「ひぃっん・・・あぁう・・やっう・・・・あっ・・・・・あぁ・・・ビ・・・ルぅ・・・」

自分の身体と、ビルの指が奏でる淫猥な音。与えられ続ける快楽。ロンの頬をいくつもの涙が伝った。同時に、ビルの掌に拘束された場所からも、とろとろと蜜が溢れて止まらない。

「ああぁ・・あっ・・・・あぁぁん・・・あああぅ」

先ほど達した時とは明らかに違う激しい痙攣をして、ロンが再び絶頂へと上り詰めた。

静かな部屋に、ロンの荒い息遣いが響く。

 

「大丈夫か?」

興奮に理性が負けて、急速にロンを追い詰めてしまった事に気づいたビルが、苦笑してロンの顔を覗き込む。

ロンは泣き濡れた瞳でビルを見上げて、無言で頷く。

そして、一言だけ言葉を紡ぐ。

「・・・・・・・・い・・れて・・」

細い腕でビルの首筋に縋り付いて、泣き続けるロン。

これ以上焦らされたら、死んでしまう。

ビルにも気持ちよくなって欲しい。

そんな思いが、頭を過ぎっては消えていく。

「・・・・・も・・・おかしく・・・なる・・・・・」

思いを全部言葉に乗せられないロンは、それでも一生懸命にビルに哀願した。

そこまで自分を求めてくれる愛しいロン。

ビルは最後の躊躇いを捨てた。

「痛かったら・・・・拒んで良いから」

優しい言葉とは裏腹に、張り詰めた凶器をロンの蕾に押し当てる。

その熱を感じただけで、ロンの身体はビクビクと震えた。

向かい合わせに抱き合った格好で、ビルの腕に導かれるままロンは自分の体重で、ビルの熱を体内に受け入れた。

ぐちっと、淫猥な音が遠くで聞こえる。

普段なら、その音をもっと大きく認識できたかもしれないが、・・・・今のロンにそんな余裕は無い。

狭い場所に押し込まれる熱くて大きいビルの熱を、身体で一番敏感な場所で感じて、意識が飛びそうなほど気持ち良い。

ビルと初めて肌を重ねた後、何度もビルを思って自慰をした。勿論、蕾を弄った事もある。その行為で多少慣れていたロンの身体は、大した苦も無くビルの全てを受け入れた。

「・・・・あ・・・・はぁ・・・・あぁ・・」

これから・・・だと言うのに、ロンは体内にビルを収めきるとそのまま、うっとりと瞳を閉じた。

記憶に埋没してしまった、熱いビルの感覚を再確認でもしているのか、嬉しそうに口元を綻ばせる。

そんなロンにビルは苦笑して、ロンの額や瞼にキスを繰り返す。

「動くぞ?」

キスの合間に確認すると、ロンは少しだけ嬉しそうな表情を覗かせて、しっかりと頷いた。

 

「あっはぁんん・・・・あぁん・・・あはぁん・・・・ひ・・・ん・・・あぁ・・・」

ビルの腰を跨いで、ロンは踊った。妖艶に、貧欲に。

白い肌が赤く色づいて視界に揺れるのを、ビルは嬉しそうに見遣って、腰を突き上げる。

「・・・・イイぜ」

耳元で囁くと、ロンは嬉しそうに微笑んだ。

そのままロンは、ビルが達するまで踊り続けた。

その後も、四つん這いで後ろから。

更に名前も知らない体位で、何度も・・・・文字通りビルを味わい、堪能した。

慣れない行為で戸惑い、軋む身体より、ビルが気持ち良いと言ってくれるのが嬉しかった。

 

 

 

 

泣きじゃくり、叫び続けたロンをようやく開放したビルは、軽く身支度を整えた後、ロンを抱き締めて床に寝転んでいた。

「・・・・・・・・・・・落ち着いたか?」

ロンの呼吸が正常に戻り、身体の震えも収まった頃、優しく問いかけると、ロンはゆっくりと頷いた。そしてそのまま、甘えた仕草でビルの裸の胸に頬を摺り寄せる。

「・・・良かった?」

そしてぽつりとビルに問う。

ロンはずっと不安だった。

ビルが自分に触れてくれなかった間、本当は後悔とかそんな感情よりも、自分の身体では女の子のように気持ちよくしてあげられなかったからじゃないか?と。

ロンなりにそういう雑誌を見て、勉強したりもしたけれど・・・・実際、自分の身体の具合なんて自分では推し量れなかったから。

思っても見ないロンの言葉に、ビルがすくすくと笑いをこぼした。

「・・・・最高だったよ」

答えと共に、ロンの額にキスを落とす。

「・・・本当?・・・嘘じゃない?」

その答えを信じられないのか、ロンは更にビルを問いただす。

「あぁ・・・・嘘じゃない・・・・・・あんなに中に出してやったのに、信じられないのか?」

くすくす笑って、意地悪い事を言うビルに、ロンはおぼろげな記憶の中の自分の痴態を思い出したのか、顔を真っ赤に染めた。

恥ずかしさを誤魔化す為にか、ロンはビルの首筋に腕を回して、苦しいくらいに抱きついた。

「・・・おい・・・くるし・・・・・・ロン?」

あまりに容赦の無い力だったので、苦笑しつつもロンを引き剥がそうとしたビルだったが、突然唇に触れた柔らかい感触に驚いて、ロンを凝視する。

「・・・・ビル・・・・・・ありがとう・・・・僕、今日の事一生忘れない・・・・」

真っ赤な顔のまま、真面目にそう言ったロン。

目を見開いたビルの頬に、僅かに朱が指した。

「ずっと会いたかった・・・・昨日も、ビルの事を考えて眠れなかったんだ・・・・・大好き・・・お願いだから、捨てないで」

勢いに乗せて、胸の内を吐き出したロン。

昔から、少し思考回路が短絡的な所があったが・・・・ビルの予想を大きく裏切り、可愛い事を言い放つ。

こんな可愛らしい顔で、声で、仕草で「捨てないで」は、反則だ。

「わかってる・・・・・お前は、一生俺の可愛いロニーだよ」

言いながら愛しい唇にキスを落とすと、嬉しそうに瞳を細めて擦り寄ってくるロン。

口に出して言う気はさらさら無いが、ロンだけじゃなくビルだって・・・・寂しくて、不安だった。

今日だって、何週間も前から準備して、ここへ来た。かつての学び舎に不法侵入してまで、ロンに会いに来た。・・・・勿論、最初から抱くつもりで。

正直前の1年が耐えられたから、今年も・・・なんて無理な話だった。

意図的に日常からロンの存在を消し去っていた昨年とは違い、月に何度も手紙で甘い言葉を囁きあって、最後は必ず「会いたいよ」とか「愛しているよ」とか・・・短い言葉に思いを託す日々。飢えを感じるのは当然だった。

ロンが欲しい。

ロンに触れたい。

ロンを感じたい。

何度もそう思って、何度もここへ来る事を考えた。

実際、ホグズミードまで来てしまったことも実は一度だけある。

大人の分別を持って考えれば、愚かな行為だ。自分だけならともかく、こんな事・・・誰かに知られたらロンが傷付く。

それでも会いたくて。

自分が知らない間に、ロンの気持ちが離れていたらどうしようかと・・・そんな不安を払拭したくて。会いに来た。

女々しくも声をかけずに何時間も様子を伺ったりもした。

自分でも、馬鹿だと思う。完全にロンに参っている自分。

両親が知ったら、嘆き悲しむだろう。

わかっていて、関係を止める気なんて無い。

 

 

 

 

悪い事だと知っていて、弟を抱きに来た。

 

 

 

おわり。

 

えぇと・・・思いっきりスランプです(泣)

待っていてくださった皆さん、こんな出来ですみません〜(T_T)

甘い時間・・・・あま・・・い・・・ですか??

微妙です。すみません!!!(逃)

2005・03・13 みづきちよ

 

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